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マウスピース型カスタムメイド矯正装置(製品名 インビザライン 完成物薬機法対象外)の基礎知識

監修医:矯正歯科医 森本 洋孝

マウスピース型矯正装置で矯正治療を行っている医院や患者さんのブログなどに、「IPR」という言葉がよく登場します。歯を削る処置と書かれていることが多いですが、いったいどんなときにそれが必要なのでしょうか?

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「IPR」は「Interproximal Enamel Reduction」の略です。隣どおしの歯のエナメル質を削って薄くします。この手法は昔から矯正治療で行われてきました。隣どおしの歯のエナメル質を削って薄くするので、歯の横幅が小さくなります。ディスキング、ストリッピング、スライシングとも呼ばれています。

歯の一番外側のエナメル質を0.2〜0.5ミリ削ります。エナメル質の厚みは歯の種類によって異なりますが、日本人の場合、約1~2mmの厚みがあります。IPRの時に削る量は、約0.2〜0.5ミリです。隣どおしの歯のエナメル質を削るので、2〜4ミリの内の0.2〜0.5ミリを削ることになります。

歯の構造は大きく三つに分かれます。

  • 歯髄:神経や血管の通っている場所
  • 象牙質:骨と似た組織
  • エナメル質:非常に硬い材質


エナメル質は人の身体の中で、歯にだけ存在する組織です。上下の歯が当たる部分では、エナメル質は自然にすり減ります。 エナメル質の範囲内であれば、削っても問題はありません。過去の研究結果でも、IPRが原因で虫歯になったり、歯の寿命が短くなったりする報告はありません。

IPRは、削れる量が一定になるように設定してある専用器具を使用します。麻酔の必要もありません。マウスピース型矯正装置による矯正治療ではシミュレーションによって、どの部位を、どのタイミングで、何ミリ削るのか計画を立てていますので、治療後に隙間が残ってしまったり、削りすぎたりすることはありません。

日本人前歯におけるエナメルの厚さに関する研究 接着歯学 1997 年 15 巻 3 号 p. 262-272 佐藤 亨, 梅原 一浩, 中澤 章, 腰原 好